「管理職教育・育成のエキスパート」

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   テーマ 119 管理職者に求められる成果は新しい現実
         (新たなお客様、新たな売上・利益)をつくり、
          環境を変えること

■ダイナミック・ケイパビリティとは、
 コダックと富士フイルムの違い

ハーバードビジネスレビュー
「ダイナミック・ケイパビリティと経営戦略論」の中で、

慶應義塾大学の菊澤教授は下記のようなことを述べています。

*ダイナミック・ケイパビリティとは、カリフォルニア大学バークレー校の
 デイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された経営理論のことをいいます。

----------
ティース教授は、
「ダイナミック・ケイパビリティとは、企業が技術・市場変化に対応するために、
 その資源べースの形成・再形成・配置・再配置を実現していく
(模倣不可能な)能力のことである」
と説明する。

さらにティース教授は、ダイナミック・ケイパビリティは
下記の3つの要素に分解できるという。

1.環境変化に伴う脅威を感じ取る能力(Sensing:感知)

2.そこに見出せる機会を捉えて、既存の資源、ルーティン、
  知識を様々な形で応用し、再利用する能力(Seizing:捕捉)

3.新しい競争優位を確立するために
  組織内外の既存の資源や組織を体系的に再編成し、
  変革する能力(Transforming:変革)

〇イーストマン・コダックと富士フイルムに学ぶダイナミック・ケイパビリティの戦略学

コダックも富士フイルムも、写真フィルムの生産販売を通して、
長く多大な利益を獲得してきた世界的な大企業であった。

ところが、1990年代にデジタル・カメラが普及し始め、
写真フィルム販売が大幅に落ち込み、両社とも経営難に陥った。

コダックは、早い時期から市場の変化に伴う脅威を感じていたが、
株主価値や利益の最大化を求めて
既存のルーティンやケイパビリティの踏襲に固執した。

豊富な資金で大量の自社株を購入し、
株価対策を講じるなど硬直的な戦略を一貫して採っていた。

コダックには環境の変化に対応して、既存の高度の技術や知識資産を
再構成・再利用するという考えはなかった。

コダックにはダイナミック・ケイパビリティが
あったのかもしれないが、その能力を利用して
持続的競争優位を確立するという戦略思考がなかったのである。

これとは対照的に、富士フイルムは
ダイナミック・ケイパビリティを積極的に利用した。

株主価値や利益の最大化ではなく、
既存の高度な技術や知識資産を徹底的に再利用して

新しい知識や技術を開発し、
そこに保有していた資金を投入したのだ。

たとえば、すでに保有していた高度の写真フィルム技術を利用し、
液晶を保護するための特殊な保護フィルム技術を開発していた。
今日、この分野では独占的な状態にある。

また、写真フィルムの乾燥を抑えるために利用していた
コラーゲンをめぐる技術を応用し、新しい化粧品を開発した。
そして、今日、化粧品業界に進出し、成功している。

さらに、今日、エボラ出血熱の特効薬になるのではと
注目されている医薬品の開発まで行っている。

コダックと富士フイルムの運命を分けたのは
技術力や知識力や資金力ではない。

実は、ダイナミック・ケイパビリティと
それを利用して持続的競争優位を確立しようする
戦略思考にあったといえる。
----------

■VUCAの時代は新しい現実
 (新たなお客様、新たな売上・利益)
 をつくる母と考える
 

少し長い引用になりましたが、管理職の方が、
新しい現実(新たなお客様、新たな売上・利益)

をつくっていくために、コダックと富士フイルムの話は、
非常に参考になるのではないかと思います。

VUCAの時代に大切なことは効率化だけではなく、
付加価値を付け別なものを生み出すということです。

この場合、全くゼロから作り上げるのではなく、
今あるものに付加価値をつけて
別なものを生み出すという発想が重要となります。

「P・Fドラッカー著 明日を支配するもの ダイヤモンド社」
の中に下記のような言葉があります。

-----
継続的改善は、積み重ねによって、
活動のすべてを根本的に変える。

製品のイノベーションをもたらし、
サービスのイノベーションをもたらす。

プロセスの刷新をもたらし、事業の刷新をもたらす。
やがて、すべてを根本的に変える。
-----

重要なことは、目標を明確に設定し、
日々一生懸命考えて、新しいことにチェレンジし、

小さくても目標達成に向け、
継続的に改善、改革を積み上げていくことです。

日々の取り組みを行うにあたって
管理職者として常に押さえておくべきことは、
下記のようなことになります。

1.自部署の強みは何なのか、
  それをもっと伸ばすにはどうするとよいのか。

2.自部署の改善すべき点は何か、
  改善することによって、効率がよくなるのか、
  新たな付加価値を付けることができるのか。

4.業界や世の中全般の技術開発の中で取り入れるべきことは何か。

現状の技術情報や商品情報を日々収集することや、
常に専門分野の勉強を行うことが、
より一層必要となります。

変化はイノベーションの母ともいわれます。
VUCAといわれる今の時代は、安定は期待できません。

常に考え、新しいものを生み出すという姿勢が必要です。